第2回 神奈川県立県立川崎北高校(http://www.kawasakikita.ed.jp/)

 

★「自己表現」を軸として情報教育の可能性を模索


 同校は平成7年度(1996年)より3年生を対象に「情報基礎」という科目をカリキュラムに組み入れ、積極的に情報教育に取り組んできた。最近では「情報教育が進んでいる」ことを志望動機に、同校に入学する生徒が増えているという。
 平成15年度から必須化される「情報」に対しても、同校では今年度から1年生必修科目として「情報A」(1単位)、2年生必修科目として「情報A」(1単位)、3年生選択科目として「情報基礎」(2単位)を前倒しして実施。その中から今回は4月に入学したばかりの1年生の授業を見学させていただいた。
 授業が行われているのは3階のパソコン教室と2階の国際教室。1つの教室の生徒数は20名で、それぞれ2名の先生が付き、チームティーチング形式で授業が行われている。
 単純に考えると生徒10名につき先生がひとり付く計算だ。この割合だと、生徒側もストレスなく先生に質問することができる。熟練度に差が出やすい『情報』の授業では同校のような割合がベストなのではないだろうか。チームティーチング形式を採用している学校でも、1クラス(40名)当りの担当は2名というケースが一般的というから、このことからも、同校の情報教育にかける意気込みを知ることができる。
 生徒たちが使用するマシンはWindows98SEである。コンピュータ室には40台、国際教室には20台、合計60台(うち教員用2台)が整然と並んでいる。周辺機器としてはカラーレーザープリンタ(1台)、レーザープリンタ(5台)、デジタルカメラ(5台)、スキャナ(1台)がある。また、昨年1月より職員の手作業で校内LANを構築し、常時接続のケーブルインターネット(東急ケーブルテレビ)を導入している。これにより、パソコン教室、国際教室はもちろん、職員室、体育館、教科準備室などでも、いつでもインターネットが利用できるようになった。施設環境の面では水準以上のレベルにあるといっていいだろう。

取材当日は、まず導入部(10分間)として、キータイプの練習、ユーザー名とパスワードを使ってネットワークにログオンする方法、専用フォルダとショートカットの作成が行われた。
 タイピング練習は専用ソフト「特打」を使用。ゲーム感覚で練習できるためか、ほとんどの生徒は授業が始まる前からパソコンに向かっていた。
 同校1年生を対象にしたアンケート調査によると、約6割の生徒の家庭にパソコンがあり、ゲームソフトを利用したことがあると答えた生徒は80%を超えるとあって、生徒によって多少のレベルの差はあるものの、キーボードを打つことに関しての違和感は全くないように見えた。
 専用フォルダとショートカットの作成についても、一部では戸惑う生徒が見受けられたが、そのつど中村先生が個別に指導に当たり、全員がクリア。同校の場合、教壇から生徒の操作状況が一目で把握できるよう、パソコンを『コの字』型に配置している。こうした細かな気配りも授業の円滑な進行には欠かせないものである。
 以上の導入項目が終わると、次は今回のメインテーマであるビジネス文書の作成だ。使用ソフトは「Word2000」。授業の流れは次の通りである。
@専用ソフトの起動
Aツールバーの説明 
Bグリッド線の表示・非表示 
C左寄せ、センタリング、右寄せ 
Dフォント/サイズ、種類(明朝体、ゴシック体、行書体、POP体など)の設定
E均等割付
 前述のアンケートによるとワープロソフトの経験がある生徒は約55%いるものの、文字の修飾、均等割付を含めた本格的なビジネス文書を作成した経験がある生徒は少ないため、文字のサイズが大きくなると「オー」、書体が変更されると「ヤッター」と歓声が上がる。できなかった場合も「どうして…」と声を上げる。段階ごとに一喜一憂する生徒たちの姿がとても印象的だった。

  同校では神奈川県が推進する生涯学習の一環として、1998年から県民向けのパソコン関連の講座や小・中学校向けのパソコン教室を開催している。これまでは担当の先生が講師役を勤めていたが、将来的には生徒がそれを勤められるようになればと考えているという。
「他人に教えることで、生徒自身のパソコンに対する理解度やスキルが向上するのは間違いありません。そのうえ、受講者の年齢層に合わせて、どう分かりやすく、また楽しく教えればよいかは、自己表現と密接に関わってくるからです」
 先生方はそれが早急に実現できるとは思っていない。しかし、こうした思い切った方法も、これからの情報教育には必要だろう。
 本格的なIT化社会の到来にあたり、インターネットを利用して、世界を舞台に活躍できる人材を育成することが、情報教育の大きな目標でもある。世界を相手にするためには、自己表現能力や自己プロデュース能力は不可欠な要素である。
 その点では、情報教育を単に「パソコン操作やスキルを磨く」だけでなく、「自己表現能力の鍛錬の場」として捉える同校の方針は、ひとつの大きな指針になるといえるのではないだろうか。
  


 

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