第7回 「三位一体」と教員の給料

「三位一体」のわかりにくさ

 「三位一体」という聞き慣れない言葉がにわかにマスコミを賑わせている。 小泉内閣の「三位一体」論は多様に用いられているが、税財政の「三位一体」という場合には、「補助金、交付金、国税と地方税との税源配分という3者を、同時に改革すること(『知恵蔵』朝日新聞社)」を言う。
 学校教育法で設置者負担主義が明文化されているように、教育費の場合も市町村立学校の経費は、その学校を設置する市町村が負担するのが建前だが、実際には、地方自治体に配分されている仕事が多いにもかかわらず、それを遂行するのに十分な地方税の課税権限を与えられていないため、日本の地方自治体は、国から地方自治体に移転される補助金や交付税に依存するよりない。
 ところが補助金は、国が決めた仕事を国が決めた通りに、地方自治体が実施しなければ交付されない。使いみちの決まった「ひも付き経費」だ。使いみちが自由である交付税なら、補助金のように国に使いみちをコントロールされることはないが、いくら使いみちは自由といっても、それでは子どもが親からの仕送りに依存しているようなもので、自立しているとは言えない。地方自治体が自立していると言えるためには、地方自治体も生活の糧を自力で稼げるようにすることが先決だ。


補助金大幅削減で教員給料も市町村負担に

 教職員の給与は、市町村の教育費の6割から7割を占める大きなものだから、給与費の上げ下げはたちまち教育費の総額に影響する。給与費の上げを抑えれば教育費も大幅に抑えられるし、抑え切れなければ教育費の総額は当然膨張する。地方自治体の長ともなれば、教職員の給与を数パーセント上げて世間並みにするよりも、道路を造り、橋を架け、トンネルを掘ったほうがよほど住民の役に立つし、人目にもつくと考えるのが常識だろう。その金にも事欠くとなると、まさに「無い袖は振れぬ」で、まず教育費の圧縮、教職員給与費の削減から始めるよりない。


ご利益もある「ひも付き補助金」

 この先面倒な義務教育費国庫負担法の縛りが取れ、教職員の給与は地方自治体の自由裁量ということになれば、地方自治体の長は自分のリーダーシップを発揮して特色のある市町村経営が可能になる。少人数学級もティーム・チーチングも、お望みならどんなに斬新な教育機器も備えることができる。
 しかし、手のひらに裏と表があるように、教育に熱心な地方自治体ばかりではない。昭和大恐慌時代の話は決してあり得ないことではない。「ひも付き補助金」がかえって有利に作用していることもある。


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下村哲夫(しもむら てつお)
昭和10(1935)年高知県に生まれる。東京教育大学大学院博士課程修了。教育学博士。香川大学助教授、東京教育大学助教授、筑波大学教授を経て、現在早稲田大学教授。教育法制論、教育経営学専攻。『学校事件−そのアカウンタビリティ』(ぎょうせい)、『時評平成の教育』(教育出版)他著書多数。